目指すのは“誰もがきれいな水を使える世界”、活動継続を支える遺贈寄付/ウォーターエイドジャパン

目指すのは“誰もがきれいな水を使える世界”、活動継続を支える遺贈寄付/ウォーターエイドジャパン

認定特定非営利活動法人 ウォーターエイドジャパン

ウォーターエイドは、1981年にイギリスで設立された国際NGOです。40年以上にわたって、水・衛生分野に特化した活動を続けています。世界では、7億人以上が清潔な水を利用できず、2分にひとりの5才未満の子どもが不衛生な水やトイレが原因の下痢で命を落としています。貧困層など社会から取り残されがちな人々が、清潔な水やトイレを利用し、手洗いなどの衛生習慣を実践できるよう、現地に適した解決策を実行しているウォーターエイドで、寄付担当をされている杉山真里菜さんと田川みこさんにお話を伺いました。(取材日:2025年1月20日)

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杉山真里菜さん(写真右):
ノルウェーの大学院修了後、2018年ウォーターエイドジャパンに入職。マスエンゲージメントを担当。

田川みこさん(写真左):
民間企業を経て2021年にウォーターエイドジャパンに入職。個人寄付を担当。

目次:

1. 「託したい」という想いを、真摯に受けとめる仕組みを作りたい

___まずは遺贈寄付に取り組まれた経緯からお伺いできますか。

杉山)対外的に明確に告知し、遺贈の受け入れを始めたのは2020年のコロナ禍ぐらいからです。ウォーターエイドは、もともとイギリスで設立された団体で、イギリスには寄付文化が根付いていることもあって、以前から遺贈寄付の存在は知ってはいました。

そんな折、2021年に初めてご遺贈をいただく機会がありました。また、それに続いて別の方からも遺贈寄付をいただくということが複数回ありました。その多くが、既存の支援者の方ではなく、遺贈寄付によって初めて団体とつながる方々でした。

そのようなケースが続いたことで、大切なお金を私たちの活動に託すという意思をお持ちの方がいらっしゃることを認識し、せっかく託していただくのであれば生前にご希望やお気持ちをしっかり伺って、お礼もお伝えしたいと思い、体制づくりに向けて団体内で動き始めました。


___これまでの取り組みの中で印象に残っているケースはありますか?

杉山)遺贈寄付ではないのですが、毎月ご支援くださっている支援者の方からのお声を募集したことがあります。

その時に、「自分は直接活動に関わることはできないけれど、代わりにこうして現地に寄付を届けてもらえることがありがたい」という声を寄せてくださった方がいらっしゃいました。現場で働くスタッフだけではなく、支援者の皆さまも私たちと一緒に活動してくださっているのだなという想いが伝わってきて、とても嬉しかったことを覚えています。


___遺贈寄付に取り組み始めて、今、どのようなことを感じていらっしゃいますか?

杉山)亡くなられて初めてご遺志がこちらに伝わるという形ではなく、生前からコミュニケーションをとれるような関係づくりの必要性を感じています。ご家族がいらっしゃらない場合は特に、ご遺志を確認する術もなく、こちらからの感謝をお伝えすることもできないため、もし遺贈のご希望がある場合には、まずはお気軽にご相談いただければと思います。顧問弁護士や顧問税理士とも相談しながら、できる限りご希望に沿うかたちで進めていきたいと思っています。その認知を広げていくことが、今一番求められる取り組みだと感じています。

2. 軸をぶらさず、未来へつなげる活動と想い

___40年以上にわたり、水・衛生分野に特化した活動を続けてこられて、今、感じている課題感はありますか?

杉山)私たちの活動は、現地政府や住民、水道事業者などと連携しながら、長期的に現地の水インフラとそれを支えるしくみを整えるというものです。現地政府などとしっかり連携することで、支援の効果が持続することになりますし、そのような分野に私たちが専門性を持っているためです。しかし、近年、地震や紛争など緊急時の支援への注目が集まりやすく、長年にわたって存在している、日常生活で安全な水を利用できない、という課題がうもれてしまうことを懸念しています。

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WaterAid/ Bernard Abu. Mutijima
給水システムの建設を担う現場監督である、ルワンダのパピアスさん。ウォーターエイドの活動国では、現地政府や民間企業と連携しながら、水・衛生の専門家が事業を進めています。

___ご寄付を通じて、これから特に力を入れていきたい活動はありますか?

杉山)ウォーターエイドは、2022年に今後10年間の活動指針となる「グローバル戦略 2022-2032」を発表しました。今、環境だけではなく、教育や保健という文脈でも、気候変動が与える影響が深刻化しています。対処する術を持たない地域の人たちが被害を受けると、基本的なインフラにアクセスできなくなり、衛生状態や水へのアクセスが振り出しに戻ってしまうこともあります。そのため、根本原因とも言える気候変動の問題に、もっと力を入れていきたいと考えています。

気候変動の影響を大きく受けている人たちの声をもっと発信し、同時に各地域に合わせた災害や変化に強い水・衛生の仕組みを作っていく。仕組みさえ作ることができれば、生活が変わり、そこから先は現地の人たちが自分たちの力で変えていくことができると思っています。これからも仕組みを作る活動を団体としては大切にしていきたいと考えています。

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WaterAid/ Fabeha Monir
気候変動の影響を最も受けやすい国のひとつであるバングラデシュにて、ウォーターエイドが設置した、自然災害に強い構造のトイレ棟。男女別のトイレ6基のほか、貯留タンクや手洗い場を備えている。

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WaterAid/ Fabeha Monir
設備の設置後、それらを維持管理するしくみを整備するとともに、周辺地域の住民を対象とした、手洗いなどの正しい衛生習慣を促進するセッションを行った。

___これまでどのように活動の認知を広げてこられたのですか?

田川)ウェブサイトやSNSを通じて情報発信を行い、ご支援くださった方には、年に数回、活動報告をお送りしています。また、国際協力に関心のある方が集うイベント会場で、来場者の方と直接交流する機会も大切にしています。

トイレに変身できるコスチュームを用意したり、現地の水くみに近い体験をしていただくなど、手を動かしたり、ワークショップへの参加を通じて、実際に体験する機会を意識的にご用意しています。そうした対面の場では、学校でSDGsを学んでいるお子さん連れのご家族など、幅広い層の方々との出会いがあります。

杉山)ボランティア育成イベントも年数回開催しています。オリジナル教材を使って水について学んでもらうのですが、お仕事をリタイアされた年代の方が、「これまでなかなか社会活動に参加できなかったから」と参加してくださることもあります。小学校などで授業を行う際には、ボランティアの方が一緒に参加してくださることもあるんですよ。

3. 遺贈寄付に興味を持っている方へのメッセージ

___最後に、遺贈寄付を検討されている方へのメッセージをお願いします。

田川)私は、支援者の方々と一番身近に接する場所で仕事をしています。お電話やメールで、当団体への想いを伝えてくださる方も多く、常に皆様のあたたかなお気持ちを感じ、皆様のご支援で活動ができていることを日々実感しています。託していただいたその想いを、現地の人にも伝え、現地の声を支援者の方々に伝えていくことを、誠実に続けていきたいと思っています。

日本ではまだ、寄付自体のハードルが高いのが現状です。会ったこともない人にお金を託すということは、簡単なことではないと思います。そこを越えて行動してくださる方々に、本当に尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。

杉山)遺贈寄付の担当になってから、これまでよりも寄付者の方の想いを届けていくという意識が高まったように感じています。

「遺贈は未来へのラブレター」とよく言われますが、自分が残したい未来や社会を描くと、人生の最期というものもポジティブにとらえ直すことができるような気がしています。未来に想いをはせることで、自分自身の生き方や人生の捉え方も変わってくるのかもしれない。そう思うと、遺贈寄付というのは素晴らしい文化だと思います。

当団体への応援に限らず、遺贈寄付そのものを選択してくださる方が増えることを願って活動しています。関心を持ってくださった皆様にも感謝いたします。どんな小さな疑問でもかまいませんので、いつでもお気軽にご連絡ください。

4.寄付の使い道について

ウォーターエイドは、これまでに2,890万人に清潔な水を届けてきました。皆様のご寄付は、生きていくために欠かせない清潔な水とトイレ、衛生習慣を届ける世界中のプロジェクトに、大切に活用させていただきます。


<遺贈寄付に関するお問い合わせ窓口>

電 話:03-6240-2772(平日:10時~18時)
メール:legacy-japan@wateraid.org
お問い合わせフォームはこちら

5.団体紹介

・団体名
認定特定非営利活動法人 ウォーターエイドジャパン

・所在地
東京都墨田区亀沢2-12-11 PAX21 301号

・代表者
理事長 古米 弘明

・設立年
団体設立 1981年、日本法人設立 2013年


<ビジョン>
すべての人が、すべての場所で、安全で持続可能な水と衛生設備を利用し、衛生習慣を実践できる世界

<ミッション>
清潔な水、 適切なトイレ、 正しい衛生習慣。健康で尊厳ある暮らしに欠かせないこの3つを届けることで、世界で最も取り残されている人々の暮らしを改善していきます。

<活動内容>

1.安全な水の供給

清潔な水が使えない原因は、水不足やインフラの未整備、人材の不足など地域によって様々です。原因を分析し現地に合ったインフラの建設や人材育成、啓発活動など最適な解決策を実行し、人々が安全な水を継続して使えるようにします。

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WaterAid/ James Kiyimba

2.適切なトイレの普及

世界では今も15億人がトイレを使えません。トイレがなければ、外で排せつするしかなく、女性が危険な目にあったり感染症が広がったりします。ウォーターエイドは誰もが安心して使えるトイレを設置し、人々の健康と尊厳を守ります。

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WaterAid/ DRIK/ Habibul Haque

3.正しい衛生習慣の促進

手洗いなどの衛生習慣は感染症から身を守るために不可欠です。一方、世界では感染症と戦う最前線である病院・診療所の4割に手洗い場がありません。 ウォーターエイドは村や病院・診療所で啓発活動や手洗い場の設置を進めています。

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WaterAid/ Vivek Vadoliya

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