遺贈寄付がつなぐ、若者と地域の未来―地域に飛び込む高校生と、教育からはじまる地域づくりを支える仕組み/ 地域・教育魅力化プラットフォーム

遺贈寄付がつなぐ、若者と地域の未来―地域に飛び込む高校生と、教育からはじまる地域づくりを支える仕組み/ 地域・教育魅力化プラットフォーム

一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム

高校時代の3年間を地域で過ごす「地域みらい留学」。これまでに全国35道府県・169校の公立高校が受け入れ先となり、約4,000人の若者たちが地域に飛び込んで学び、自分の進路や生き方を見つけてきました。この仕組みを支えているのが、教育を入口に地域を変えることを目指して活動する「地域・教育魅力化プラットフォーム」です。地域と学校をつなぎ、全国で魅力ある教育環境をつくる取り組みが、地域に新たな人の流れと可能性を生み出しています。今回は、寄付担当の黒谷直子さんに、取り組みの背景や活動に込めた想いをお伺いました。(取材日:2025年1月27日)

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黒谷 直子さん
島根県の公立高校を卒業後、県外大学へ進学。前職で教育環境と若者の進路選択に対して違和感を抱き、地域・教育魅力化プラットフォームに入職。ファンドレイジング事業を担当。

目次:

1. 地域での3年間がくれた、「学びたい」と「やりたい」を見つける力

___まずは活動について教えてください。

私たちが活動を通して作りたいと思っている未来は、「意志ある若者に溢れた持続可能な地域社会をつくる」ということです。「地域・教育魅力化プラットフォーム」という名前には、地域と教育のどちらも魅力化したいという願いが込められています。教育だけ魅力化しても地域は活性化しないし、地域だけやっても若者の未来にはつながらないと思うのです。双方に取り組むことが必要だと思っています。

もちろん、高校時代の3年間だけ若者が行っただけでは地域は大きくは変わらないかもしれません。けれど、都市部にない大人との近さや、支えてくれる関係、おせっかいな大人との出会いなどの地域との関わりから、お世話になった地域に恩返ししたい、その地域のために役に立ちたいという想いが育まれていき、高校を卒業してまた若者たちが地域に戻ってきてくれるような新しい流れをつくれるのではないかと思っています。

地域創生にはさまざまな切り口がありますが、なぜ私たちが高校に着目したかというと、その地域に高校があるかどうかが、人口動態を大きく左右する要因になるからです。地域に高校がなければ若者は15歳で地元を離れてしまい、そこから戻ってきてもらうのはとても難しい。高校の存在は、まちづくりにとって、とても重要なテーマなのです。地元に公立高校があってそこが魅力的な場であれば、地域の中からも外からも多様な人が集まり、地元を離れなくても、多様な人との出会いの場になる。そこでいろいろな人が混じり合うことで、学校も、地域も、より魅力的に育ち合っていく。そういうことを目指して活動しています。


___地域みらい留学が始まって以来、どんな成果が出ているのですか?

2018年に始まった地域みらい留学は、2025年度には35道府県169校に拡大しています。2025年度の入学者は946名。2025年度までに約4,000人が地域みらい留学を選択しています。海外留学を希望する高校生の数を越えて、日本全国で地域と、地域の教育を活性化してくれる人材が生まれてくれるといいなと思っています。

留学生たちの中には、その地域の魅力をSNSで発信する子、大学進学後も自身の地元には帰らず、留学先の地域から大学に通う子もいます。2020年度に北海道の礼文島に留学した8名のうち、4名は島にそのまま残り就職を選択しています。大学に進学後起業した卒業生もおり、進路は多様ですが、地域で過ごした3年間があったからこそ、自分で学びたいという気持ちや、やりたい仕事を見つけたという子も少なくないようです。


___確実に広がりを見せているのですね。今後の展望を教えていただけますか。

私たちは、地域みらい留学の生徒数を増やすことにとどまらず、全国各地に魅力ある教育環境を整えることにも力を注いでいます。授業を担当する教員だけでなく、生徒に関わる地域の大人として、「地域と学校をつなぐコーディネーター」の配置の必要性も発信しています。

今後、小さな地域では、関わることのできる人材や産業に限りがあるかもしれませんが、同じような課題を抱える全国の地域同士が連携することで、魅力ある地域づくりは実現できると信じています。

日本の出生率を見れば、子どもの数が減っていくのは必然です。高校生も少なくなり、先生も少なくなり、という未来が見えている中で、今ある人やモノなどの資源だけに頼っていては先細りの未来しかありません。1校1校で戦うのではなく、良いものは徹底的に共通化して共有できるものは共有する。一方で、その地域にしかないものは、よりその個性や魅力をとがらせて磨いていく。魅力化の「共有化」と「個別化」を同時に進めていきたいと思っています。

こういう若者たちが日本各地で生まれてくるのだとしたら日本の未来は明るいんじゃないか、そんな想いをもって私たちの活動を応援してくださる方を一人でも多くつなげて、活動を拡大・継続していきたいと考えています。

2. 「未来に種をまく」事業を支える、未来に託す寄付者の想い

___遺贈寄付に取り組み始めたきっかけは何ですか?

団体設立当初は、助成金をメインに活動してきましたが、やがては自分たちで資金を獲得していく必要性があることが分かっていました。私たちの活動は、例えば災害時の緊急支援のような事業とは異なり、今すぐには形にならない、いわば“未来に種をまく”事業です。同じく、未来に想いを託す遺贈寄付であれば、応援してくださる方もたくさんいるのではないかと考え、遺贈寄付の受け入れ体制を整えていくことになりました。

ただ、遺贈寄付の場合は、いつご寄付をいただくか予想できないものでもありますので、まずは普通の寄付やふるさと納税などで認知拡大と土台作りから始めました。土台が少しずつ出来てきたので、遺贈寄付に本格的に取り組むようになりました。


___遺贈寄付でどのような事業に取り組みたいですか?

これまでいただいてきたご寄付は、私たちが事業を継続していくために活用させていただきました。もし、遺贈寄付をいただくことができたら、地域みらい留学を選んでくれた生徒たちに奨学金を出したいと思っています。親元を離れて地方で生活するには、寮費や生活費、帰省のための旅費など、さまざまな費用がかかります。それをサポートして、日本中の子どもたちの留学を応援できたらという未来予想図を描いています。一気に留学生全員分を用意するのは難しいかもしれませんが、少しずつ挑戦していきたいと考えています。

3. 遺贈寄付に興味を持っている方へのメッセージ

___最後に、遺贈寄付に興味を持っている方へのメッセージをお願いします。

興味を持ってくださり、ありがとうございます。「今の教育システムは、このままで本当にいいのだろうか」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。また、地方で生まれ育ち、進学を機に上京したことで、地元を離れて初めて地域や故郷の良さに気づいたという方もいらっしゃるかもしれません。

私たちが取り組んでいる事業は、あくまで入り口にすぎません。教育をきっかけとして、地域を、そして日本全体を元気にしていきたいという想いで活動を続けています。都市部にはない、地方ならではの日本らしさや、他にはない魅力がたくさん眠っています。地域を知ることは、日本を知ることでもあるのです。地方は決して「何もない場所」ではありません。

都会では、似た価値観や環境を持つ人と集まりやすく、自分とは異なる背景を持つ人と出会う機会が限られがちです。しかし、地域に入ってみると、実に多様な人々が暮らしていて、そうした人たちとの出会いを通して、多様な生活背景や価値観に思いを馳せることができるようになります。ときには、自分の価値観が揺さぶられるような経験もあります。

高校時代という多感な時期に、多様な世界と出会い、地域とともに変わっていく。そんな活動に共感し、応援していただけたらうれしく思います。

4. 寄付の使い道について

寄付金は、地方の魅力的な学びの促進のために使わせていただきます。具体的には、「地域みらい留学」の活動において、地方の公立高校を支援したり、生徒たちの取り組みを全国に広く発信するために使わせていただく予定です。


<遺贈寄付に関するお問い合わせ窓口>
電 話:0852-61-8866
メール:info@c-platform.or.jp
FAX:0852-61-8867

5.団体紹介

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・団体名
一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム

・所在地
島根県松江市東本町二丁目25-6 みらいBASE2階

・代表者
代表理事 岩本 悠

・設立年
2017年

<ビジョン>
意志ある若者に溢れる持続可能な地域・社会をつくる

<ミッション>
意志ある若者が育つ魅力ある教育環境を実現し、新たな人の流れが生まれるかけがえのない一助となる。

<活動内容>

1. 地方への高校進学という選択肢「地域みらい留学」
地域みらい留学は、160校を超える日本各地にある魅力的な公立高校の中から、住んでいる都道府県の枠を超えて、自分の興味関心にあった高校を選択し、高校3年間をその地域で過ごす国内進学プログラムです。

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2.「地域みらい留学」の特長
生徒たちは、①地域ならではの自然・文化に溢れた環境において、②ひとりひとりが主役になれる少人数教育を受け、③新たな友達や世代を超えた仲間と出会いながら、④想像を超えた変化や成長を実現しています。

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3.「地域みらい留学」の成果と目標
25年度までの7年間で4,000人を超える地域みらい留学生が誕生しました。受け入れ高校数は25年4月時点で35道府県・169校まで増加しています。私たちは、27年に「意志ある若者」を10,000人育むことを目指しています。

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